保育士キャリアアップ制度 保育士不足解消のための施策

保育士の処遇改善等加算 2021年度の現状と今後の新たな賃上げ額は?

2023年12月8日更新


新内閣となり首相が公約としていた保育士等の賃金アップが話題に上がることが多くなりましたね。

新内閣発足後すぐに保育士の賃金は月額9千円アップするという方針が発表されました。手続等に時間がかかるため手元に届くのは2022年の春頃と報道されています。

このような国による保育士の処遇改善は2015年から行われており2021年現在では
2015年(平成27年)から始まった処遇改善等加算Ⅰ
キャリアアップ補助金ともいわれる2017年(平成29年)からの処遇改善等加算Ⅱがあります。

それぞれの仕組みについてまとめました。

この処遇改善加算については認可保育園のみが対象となります。

勤務する全員が対象となる処遇改善等加算Ⅰ

2015年から始まった処遇改善加算Ⅰは正職員のみならずパートや事務職員など
保育園で勤務するすべての職員を対象とした加算です。

処遇改善加算Ⅰの加算額は

  • 基礎分
  • 賃金改善要件分
  • キャリアパス分

という3つにわかれています。

①基礎分とは全ての園に対して平均経験年数によって毎年2~12%加算されるものです。

②賃金改善要件分とは一定の要件を満たした賃金改善計画書や実施報告書を提出している園に加算されます。
11年未満は一律6%、11年以上は一律7%加算されますが、以下のキャリアパス分の条件を満たしていない場合は2%減少します。

③キャリアパス分とは
賃金改善要件分の支給を受けている園が
役職や職務内容に応じた勤務条件・賃金体系を設定し職員に周知していること、また
職員の資質向上のための研修機会の確保などの要件を満たしている園に加算されます。

この条件を満たしていないと賃金改善要件分から一律2%減となります。

まとめるとキャリアパス分までの要件を満たしている園では
11年以上の経験者は加算がない場合と比べて
19%アップするということになります。

グラフにまとめると下のようになります。

保育士処遇改善 経験年数と賃金アップ率

これを見るとずいぶん上昇するようにも見えるのですが職員へ直接の昇給分として必ず充てられるのは基礎分のみと決められているので
賃金改善要件分は園により配分先が異なってきます

職員への毎月の給与として最低限加算されるのはあくまでも基礎分のみとなります。

また処遇改善加算Ⅰでの経験年数とは同じ職場の年数ではなく
認可外施設等の経験も加算されます。

詳しくは>>>【内閣府】処遇改善等加算Ⅰおよび処遇改善等加算Ⅱについて

 

処遇改善等加算Ⅱ

処遇改善加算Ⅱは簡単にいうと園長や主任以外の保育士のキャリアアップを図り
それに応じた手当を加算しようとするためのものです。

具体的には7年以上の経験者から副主任保育士と専門リーダー、
3年以上の経験者から職務分野別リーダーを任命します。

これらの役職がついた保育士はそれぞれに応じたキャリアアップ研修の修了を必須とされますが
令和3年度までは研修要件についてはまだ必須ではありません。
現状では規定の人数内で園からそれぞれの役職に任命された保育士が加算の対象となります。

具体的な人数等の制限や事例についてはこちらの記事にまとめています。

保育士キャリアアップ研修と副主任・専門リーダーとは?

処遇改善等加算Ⅱ いくら加算される?

処遇改善等加算Ⅱの加算額は

  • 副主任保育士 専門リーダーは4万円
  • 職務分野別リーダーは5千円

となっています。

これもその人数×手当分が国から園へと支給されます。

配分については
4万円加算される副主任保育士を一人以上確保すれば
あとは園長を除く職員で5千円~4万円の間で配分可能とされています。

また、このように配分する場合は職務分野別リーダー等への加算は副主任保育士への最低配分額を超えることはできません。

 

とてもわかりにくいですよねー。

 

簡単な例をあげると
4人副主任保育士がいて16万円支給された場合に
一人の副主任だけ4万円を支給し、残りの12万円を他の副主任保育士と他の職員等に分配して加算できます。

副主任保育士以外に加算対象となる職員を10人だとします。
副主任保育士がもらう最低額をそれ以下の職員が受け取ることはできないので
例えば残りの3人の副主任保育士に1万円ずつ支給すれば残りは5万円。

この5万円を10人でわけると5000円ずつ加算されることになります。
(配分は5千円~4万円の間なので実際は均等にする必要はありません)

さらに令和4年度までの措置として処遇改善等加算Ⅱの加算額の20%以内は
同法人内の他の施設の職員の賃金改善に充当可能となっています。

なので給与明細の加算額が納得いかないーという保育士さんが多いのでしょうね・・・。

個人的には辞令を受けてその役職につき、その人数分国から補助金が出るならそのまま支給してもいいのでは・・・と思うのですが。

自治体独自の加算も

国による処遇改善等加算のほか東京都の月4.4万円など独自の加算が行われている自治体もあります。

ちょっと興味深いのは川崎市の加算です。

国の処遇改善等加算Ⅱの足りない部分を補完して加算しています。

具体的には国の処遇改善加算Ⅱでは副主任や専門リーダー、職務分野別リーダーの人数制限があるため
この経験年数に該当する職員が多い場合は同じ経験年数なのに加算対象とならない保育士がでてきます。

これらの対象となる経験年数3年から6年、また7年以上の保育士等を多く抱える施設に対し
処遇改善加算Ⅱの加算対象となる役職の人数制限を超えた部分と主任に対しても市が加算して処遇改善を補完しています。

詳細>>>【川崎市】処遇改善等加算

このように支払われるなら対象となる職員それぞれに紐付けて支払われるのが理想ですよね。

神奈川県は保育士の処遇改善が充実しています。

神奈川県 保育士確保のための優遇施策 2021年度現在の状況は

このように国や自治体が色々と処遇改善を図っていますがそのすべてが直接給与に反映されるわけではありません。

新内閣が進める9千円の賃金アップも園への一括支給でしょうが、保育士さんへの直接的な支給に繋げてほしいですよね。

保育士給与については国や自治体の補助があっても結局は園によるところが多いのが実情です。
希望の給料と差があるなら転職も視野に他の求人を色々見てみることもおすすめします。

2023年12月 【目的別】おすすめ保育士転職支援サイト(転職エージェント)一覧と使い分けのコツ

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